時代は変わる

bearsmick2008-10-03

僕が本格的にバーテンダーの勉強を始めたのは、今から四半世紀以上も前のことで、日本はまさにバブル期に突入しようとしていた時期でした。それまでは、学生時代にバイトしていた、下北沢界隈(池の上)の小さなロック・スナック「む」でしか水商売の経験がなく、なんちゃってカクテルしか作ってなかったのですが、何の縁か当時の青山では有名なレストラン&バー「クーリーズ・クリーク」からお声が掛かり、そこでバーテンダーとして働くことになったからです。
もとより、そんなにお酒が強い訳ではなかったものの、飲みに行くのは好きだったので、音楽関係の店にはよく行ってはいたのですが、仕事として関わるようになってからは、ただ飲みに行くのでなくて、やっぱり何かしら得ようとする思いもあり、ある種勉強の気分もあったりしたものでした。
という訳で、デートも兼ねて有名な銀座の老舗のバー(例えばサン・スーシやスミノフなど)をはしごしたり、原宿の有名なバー「ラジオ」へ行ったりしたものです。当時はまだ僕も30歳にもなっていない時期だったので、相当背伸びしたり気張っていたのですが、それでもなんだかバーの粋さというものは感じていたように思います。当時の彼女(現在のカミさんですが)はそんなにお酒が強くはなかったのですが、同じようにちょっと無理してでも粋なカクテルを飲ませたりしていたものでした。そうやって大人の世界へ近づこうとしていたんだと思います。
ところが、今夜やって来てくれた若者が言うことには「TVで言ってたんですが、最近の若者の舌は幼児化しているそうですね。」ということ。僕も何気に思っていたことですが、確かに最近の若者はお酒が飲める人も、平気でカルア・ミルクなど甘くて軽いカクテルをなんの恥じらいもなく注文します。もちろん好きなもの、飲みたいものを注文すりことは別に悪いことでもなくて、ましてやお客さんなのだから、店とすれば、そのことをとやかく言うこともないのかもしれませんが、バーの粋さや文化というものが、ちょっとずつ崩れていっているのかなと思うとちょっと残念な気持ちもあります。
その今夜の若いお客さんも、ショット・ガンやニコラシカといった強いカクテルとともにメロン・ミルクなども飲んでいかれました。確かに甘いカクテルもデザート的にあるいはナイト・キャップ(いわゆる寝酒のことです。)に飲むことは、それなりにオシャレではあります。カクテルの注文の仕方、飲む順番によって、そのお客さんの文化度の高さが計り知れたりすることもあったりします。ベアーズ・カフェは、オーセンティックなバーとは違ってカジュアルのなかにも本格的なカクテルを出そうと思って営んでいる店なので、気楽に考えてもらってけっこうなのですが、そこに少しだけ粋さを加味してもらえたら、お互いにもっともっと楽しい場が作れたりするのかもしれません。
とはいうものの確実に時代は変わっていっているので、自分が思う価値観だけで物事を計ることの危険さも重々わかってはいるつもりです。ともあれ美味しいお酒を飲みながら、いろんな話が出来る場、そしてそこに集う人は、それぞれが仕事や損得、年齢や性別が関係ない個人、それこそがバーだと思う訳です。そしてそこから始まる仕事や遊び、さらには恋愛や友情など、それこそが文化だと思うのです。
そんな場でありたいと思うベアーズ・カフェ、よろしくお願いします。(笑)ということで今日の写真は、素敵な女性に是非飲んでいただきたいカクテルの女王「マンハッタン」。そうそうTV/映画で話題の「セックス&ザ・シティ」で彼女たちが飲んでいるカクテル「コスモポリタン」も当店でお飲みになれます。ヨロシクね!
タイトルを見て、ボブ・ディランだと思った人、残念でした。懲りずに今後ともお付き合い下さいませね。(笑)