永遠のゼロ

bearsmick2011-07-18

ベアーズ・カフェのお客さんであるCちゃんから百田尚樹の「ボックス」を借りて読んだのは先月のことだったでしょうか。そしてそのCちゃんが同じ百田尚樹の「『永遠のゼロ』がすごく良かった、僕も借りて読んだんだけど、自分でも買おうと思っているくらい、マスターも読んでみて!」と言っていたので図書館から借りてきて読みました。
映画化された「ボックス」もそのストーリー・テリングの確かさで高校生のアマチュア・ボクシングの世界を描き出していたのですが、この「永遠のゼロ」も戦争、特攻という重たいテーマを扱いながら、人間・命・愛、そしてそれらを考える上での視点という点で優れた小説に仕上がっていると思います。
主人公である戦闘機乗りは大正8年生まれという設定で、これは僕の亡くなった父親と同じです。子供から大人になる人生で一番多感で楽しい期間であろう青春期がそのまま日本が世界との戦争に突入していく時期に当たるわけで、軍隊に入隊してから除隊・再入隊を繰り返すところも海軍・陸軍の違いはあるもののこれまた父親と同じです。
父親が生きているうちにきちんと話が出来なかったのが、今となってはすごく悔やまれるところで、ほんともっと話を聞いていれば良かったと思います。もっとも本当は凄く辛いことが多かったであろう戦時中のことも、数少なかったであろう楽しかった思い出しか話さなかったかも知れませんが。実際1980年代にワールド・ミュージック/リゾート・ブームが起きた頃、バリを中心とするインドネシアフィリッピンのリゾートなどの話をしていた時に、父が「戦争中は俺もインドネシアにいた。」と言って覚えていたインドネシア語を話したことがありました。
僕が知っている限り、父は入隊してすぐは中国へ行って、その後、インドネシアと転戦し南シナ海に浮かぶ中国の海南島終戦を迎えたそうです。運良く生きて帰ってこれたのですが、相当な思いをしたことは想像に難くありません。
そんなことを思い出しながら読んだこの本、確かに心に残る、そして考えさせられる本です。文中にも出てくるんですが、現在の日本の官僚機構のダメさも当時の軍部から繋がっているのかも知れません。そして生き延びてきた父親の世代の頑張りによって、その後の日本、僕らの世代が、自由と幸福を享受出来たことに感謝します。
もちろん過度に評価することは避けたいのですが、親から子へと繋いで行かなければならないことは自明の理、権力に屈することなく個人の責任を出来うる限り全うしたいものです。